代理店契約で覚えておきたいポイントは?業務委託契約との違いなどを解説

メーカーが開発製造した商品や、企業が提供するサービスなどをユーザー(顧客)に販売するためには、直接営業をかけて販売する方法もありますが、代理店に販売を依頼する方法もあります。

代理店に販売を依頼する際には代理店契約というものを結びます。
これとよく似たもので、販売店契約や業務委託契約などもありますが、内容が同じように見えて全く異なるものですので、誤って意図する契約ではない契約を結んでしまわないように注意しなければなりません。

今回は代理店契約について、締結時のポイントや業務委託契約との違いなどを解説いたします。

代理店契約とは

代理店契約とは、メーカーなどの企業が自社の製品あるいはサービスの販売を代理店に依頼する際に締結する契約を指します。

ここで代理店がすることは、メーカーとユーザー(顧客)の間に立ってその商品を勧めて契約(購入)に結びつけることです。
顧客との契約が成立するのはメーカーであり、商品やサービスに関する責任はメーカーが負います。また、顧客が商品やサービスの料金を支払う相手はメーカーであり代理店ではありません。
代理店は、顧客とメーカー間での取引が完了した時点で、メーカーからマージンをもらいます。
これが代理店であり、この関係性を結ぶために締結するものが代理店契約です。

業務委託契約との違い

代理店は代理となって商品やサービスを販売する店のことを指しますが、よく似た形態に業務委託というものがあります。混同しやすいので注意したい言葉ですが、代理店契約と業務委託契約の違いは一体何なのでしょうか。

端的に言えば、代理店が商品やサービスの販売を代理するのに対し、業務委託は企業から一部の業務を委託されてその業務をこなします。
委託される業務の中に「販売すること」や「宣伝すること」などが含まれる場合、あるいはそれらの業務が中心となる場合は代理店と一見同じように見えてしまうため、混同されやすいのですが、この2つの業務形態は根本的に大きく異なります。

業務委託の具体例

業務委託契約の具体例として、音楽教室の講師についてご紹介いたします。

巷にあふれている多くの音楽教室が当てはまりますが、企業と講師は業務委託契約を結んでいます。

つまり、講師たちは社員ではなく独立事業主扱いとなり、企業(教室)から「レッスンをする」という業務を委託されているのです。


教室によっては、レッスン中に自社で販売している楽器や楽譜の購入を勧めることや、教室への入会を勧めることを業務のひとつとしているところもあり、この部分は代理店に似たような役割を果たします。

このように、業務委託契約はとても広く使われる契約であり、どんな業務を委託するかは企業により異なります。


代理店契約は商品やサービスの販売を代理でおこなうという契約ですので1件につきいくら、というマージンの計算方法となりますが、業務委託契約はより複雑で様々な方法で報酬が決まります。


上記の音楽教室の例で言えば、1レッスンあたりの単価があったり、生徒を1人入会させた際のマージンがあったり、複数の方法で報酬を得ることができるというわけです。

また、代理店契約には「有効期間」というものはありますが「納期」という概念はありません。

それに対し業務委託契約で、例えばホームページの制作などクリエイティブな業務を委託する際には「納期」という概念が加わります。この違いも2つの契約の大きな違いのひとつです。

代理店・販売店・特約店の違いと曖昧さ

代理店の他にもよく耳にするのが販売店や特約店です。
まず、これらの言葉の違いを理解しましょう。

代理店は、メーカーと顧客の間に立って商品を代理で販売する役を担います。前述した通り、顧客はメーカーに料金を支払い、代理店はマージンをメーカーから受け取ります。

これに対して販売店は、まずメーカーから商品を買い取ります。そして買い取った商品を直接顧客に販売してその売上金と買い取り額の差額を収益とします。

特約店は概ね代理店と同じですが、メーカーとの間で特別な契約を結んだ店を指します。
例えばメーカーのロゴを店の看板に使用するなどのメリットがある一方で、競合他社の商品は置けなくなるなどのデメリットも持ち合わせています。

これら3つの言葉は全く異なる意味を持ちますが、難しいのが、市場でもこれらの言葉が非常に曖昧に、かつ混同されて使われてしまっているところなのです。
販売店も特約店も「代理店」と表現されてしまうケースが多く、代理店契約だと思っていたのに契約内容を見てみたら販売店だったといったトラブルが後を絶ちません。

代理店契約を結ぶ上で注意したいポイント

そこで、代理店契約を結ぶ上で注意したいポイントを解説いたします。
これらのポイントをしっかり押さえて代理店契約で失敗しないように心がけましょう。

ポイント1.契約内容をしっかりとチェックする

当たり前ですが、契約内容は隅から隅までしっかりとチェックしましょう。
読み飛ばしなど言語道断です。
自分自身が理解している代理店と異なる点、違和感を覚えた点、疑問などは全て相手側に確認して、不安や疑問を解消することが大切です。

ポイント2.独占か非独占か確認する

独占販売ができるかどうかは代理店にとって大きな問題です。
競合他社が販売しなければ市場を独占でき、顧客獲得に非常に有利になるためです。
逆にメーカー側は多くの店頭に置いてほしいという思いで非独占にしたがるという傾向があるため、代理店契約ではこのどちらか必ず明確にしましょう。
また、独占販売の場合は、直接販売権の有無、競合品取扱の可否、最低購入数量について必ずチェックしましょう。

ポイント3.有効期限は長すぎないかチェックする

通常代理店契約は1年の有効期限を設けて結ばれ、毎年更新していくというスタイルをとります。これがもし、5年、10年と長期に渡る有効期限が設定されていると、後々トラブルに発展しかねないため注意しましょう。

ポイント4.報酬についての記載も要チェック

最も大事な点と言っても過言ではない報酬についてですが、この条件や支払い方法、支払い期日などについて、まずは明記されているかどうかチェックしましょう。
報酬条件が曖昧であったり、支払い期日の記載が無かったりすると、ほぼ間違いなくトラブルに発展します。

ポイント5.費用負担について代理店負担かどうか確認する

代理店が商品をPRするための販促行為にかかった費用は、通常は代理店が全て負担しますが、規模の小さい代理店の場合、あるいはメーカー側から直接「このような販促をおこなってほしい」という打診があった場合などは、メーカー側に実費請求をすることを検討するのもひとつの手です。可能であれば代理店契約を結ぶ時点でこの件についても相談しておくと良いでしょう。

ポイント6.損害賠償の条件を確認する

代理店のミスによって損害賠償が発生してしまった時についての記載が契約書に記載されていた場合、そしてその表記に疑問が生じた場合には、必ずその疑問を解消しておきましょう。
逆に損害賠償についての記載が無かった場合は、損害賠償についての条件を確認しておくことが大切です。

ポイント7.解約(契約終了)の決め事について理解する

契約を終了する際の決め事、また契約が終了となる条件などについて、しっかりと理解しましょう。既存顧客の扱いや、債務の精算についても確認しておく必要があります。

まとめ

代理店契約について、業務委託契約との違い、販売店や特約店との違い、契約を結ぶ際に注意したいポイントをまとめました。
「代理店」という言葉が広義に使われることが多いため、業務委託や販売店、特約店などと混同してしまいがちですが、契約を結ぶ際には自分が思い描いている代理店契約と相違がないかどうかきちんと確認し、隅から隅まで理解することが大切です。
双方で気持ちの良い取引ができるよう、しっかりと確認作業などをおこないましょう。